ロングセラー「馬首印」デザインの揺れ

図版1)喜多行監製/良燧合資会社・1889 (55 x 35 mm)

横溝健志

かって炊事や喫煙など生活用品として不可欠であったマッチは、すでに役目を終えて久しい。しかし日本では今日でもスーパーマーケットでは、ローソクや線香とともに欠かさず売られている。お墓まいりや家庭の仏壇に使われるのが主な用途とされているからだろう。災害時の備品として用意されることもあるが、夏の夕方、屋外での子供達の花火遊びには、大人も付き添ってマッチを持参しなければならない。

マッチの販売数は著しく減少したが、日本全国では12社ほどのメーカーが、今でも45種ほどの商標を流通させている。これはかって各地で親しまれたそれぞれのブランドが時代を超えて引き継がれているからである。「馬首印」も130年の間ほとんど同じ図柄が引き継がれ、現在も全国各地で親しまれているマッチブランドである。

横溝健志

「馬首印」のラベルはいくつものメーカーに引き継がれてきた。そのたびにラベルを新しくしなければならない。メーカー名を変えるだけでなく、図柄を踏襲したとしても、原版の彫刻は彫師に委ねられたから、馬の表情などに微妙な違いが生じるのだ。木口木版の原版は電気鋳造によって多数複製され活版印刷機で印刷されたが、今日ではオフセット印刷された厚紙を箱にするスキレットタイプになって、名前を入れ替えるだけで同じ版が繰り返し使えるようになった。

“図版について” :

  1. 3) 良燧合資会社/1904

    図版1)喜多行監製/良燧合資会社・1889(明治22)年意匠登録/元は喜多信松氏の商標であった。その後瀧川辨三に商標権が移り、良燧合資会社で発売された。

  2. 図版2)怡和洋行(いわようこう)/中国貿易商麦小彭(ばくしょうほう)と喜多氏の共同ブランド。
  3. 図版3)良燧合資会社/1904(明治37)年意匠登録/1910(明治43)年着色限定登録/滝川氏が1901年良燧合資会社を設立
  4. 図版4)良燧合資会社の海外向けラベル。蹄鉄はヨーロッパでは幸運のシンボルとされ、”LUCKY”の文字をあしらっている。
  5. 図版5)東洋燐寸株式会社/1917(大正6)年に良燧合資会社が他社と合併して東洋燐寸株式会社を設立「馬首印」を継続。
  6. 図版6)大同燐寸株式会社/1928(昭和3 )年にスウェーデン資本の進出で、東洋燐寸他数社が合併し「大同燐寸株式会社」が設立された。
  7. 図版7)日産農林株式会社/1932(昭和7)年世界大恐慌のあおりでスウェーデン資本が撤退。大同燐寸は日産農林に引き継がれた。
  8. 図版8)日東社株式会社/2016(平成28)年日産農林はマッチ製造を停止。ブランドを日東社に譲渡。現在はスキレットタイプで製造。
  9. 図版9)双馬蹄鉄印・良燧合資会社/1911(明治44)年意匠登録/日産農林まで製造された。
  10. 図版10)蹄鉄あぶみ印・良燧合資会社/1906(明治39)年意匠登録/蹄鉄にアブミをあしらったバリエーション。意匠登録されたが発売されたか不明。

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